【国際】LVMHのアルノー家、1兆円超でディオール完全子会社化

 【ジュネーブ=原克彦】高級ブランド世界最大手の仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)は25日、同社を保有するアルノー家のグループ会社がクリスチャン・ディオールを完全子会社にすると発表した。現在保有していない株式の約26%などを121億ユーロ(約1兆4520億円)で取得する。複雑になっていた資本構成を整頓し、ブランドの管理体制を強化する狙いだ。

クリスチャン・ディオールの完全子会社化を発表したLVMHのアルノーCEO(25日、パリ)=ロイター
画像の拡大
クリスチャン・ディオールの完全子会社化を発表したLVMHのアルノーCEO(25日、パリ)=ロイター
 アルノー家は既にディオールの発行済み株式の74%を持つ。ディオールがLVMHの株式の41%、アルノー家がそれとは別に6%の株式を持つことで実質的にLVMHを支配している。ディオールは傘下に革製品や衣服を手掛ける「クリスチャン・ディオール・クチュール(CDC)」を持つが、アルノー家の支配下にありながらLVMHとは別ラインの会社になっていた。

 今後はアルノー家がディオールの100%を保有するのと同時に、LVMHがCDCを買い取り傘下に収める。LVMHはディオールの製品のうち香水や化粧品事業を傘下に収めているが、今後はすべてをまとめて扱えるようになる。CDCの利益を取り込める利点もある。

 「この取引は長く市場に求められていた資本構成の簡素化を実現するものだ」。LVMHのベルナール・アルノー最高経営責任者(CEO)は発表文でこう説明した。さらに「CDCの獲得でLVMHのファッション・革製品部門の強化にもつながる」と強調した。

 ディオール株の取得には現金と、LVMHが保有する仏エルメス・インターナショナルの株式の割り当てを組み合わせる。ディオール株の24日の終値に14.7%を上乗せしたという。LVMHは過去にエルメス株の2割強を取得したが、エルメス創業家の猛反発に遭い、当面の買い増しを断念した経緯がある。これを有効活用することになる。取引は7月までに終える見通しだ。

 高級ブランド大手は世界2位のリシュモン(スイス)や3位の仏ケリングとも、他のブランドの買収を重ね複合体企業として拡大してきた。中には買収企業の創業家の意向などを反映して出資構成やガバナンスが複雑化したものもある。アルノー家は今回の取引でこれを整頓する意向だ。

 LVMHは今後、ディオールの製品を一括して管理できるようになる。高級品の市場は中国人が旅先で高額品を大量に購入する「爆買い」が衰えた影響で冷え込んでおり、ブランド間の競争も激しくなっている。多様な分野を覆うブランドの世界観を伝える重要性も増しており、巨額の株式取得に踏み切る必要があると判断した。

2017/4/25 19:33
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ25HRM_V20C17A4TI1000/ http://mastetae.xyz/