【IT】 ネット動画配信の競争激化 次世代メディア模索、実験の場に

 インターネット動画配信サービスの競争が激しさを増している。配信会社が自ら番組制作に乗り出す一方、テレビ局も配信事業に参入し、放送と通信の境界線は薄れつつある。市場規模はこの5年で倍増し、次世代のメディアのあり方を占う実験の場となっている。(玉崎栄次)

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◆映画並みの制作費

 平成27年に国内で定額見放題サービスを開始した米動画配信大手、ネットフリックス(ネトフリ)は昨年、吉本興業と共同でベストセラー小説「火花」を全10話の連続ドラマとして映像化し、独占配信した。

 このドラマは今年2月からNHKの地上波でも放送された。同局が動画配信会社制作の作品を流すのは異例で、ドラマ作りのノウハウが豊富な放送局も「視聴者の関心をひく」(木田幸紀・NHK放送総局長)と判断する出来栄えだった。

 「5年後の加入者が初めて見た際にも新鮮に感じられるクオリティーが必要」と同社広報の中島啓子さん。配信動画は、ネット接続機能付きのテレビなどでじっくり観賞する利用者も多いため、画質にもこだわり、映画並みの制作費を投入するドラマもあるという。

 配信事業は、NTTドコモが23年、「dビデオ(現dTV)」を開始。ネット通販大手のアマゾンが27年に「プライム・ビデオ」で参入するなど競争が激化している。

 中島さんは「利用者を増やし、つなぎ止めるには、独自の強いコンテンツを持つことが不可欠」と話す。ネトフリは昨年、計600時間のオリジナル番組を配信したが、今年はそれを計1千時間に増やす予定だ。

◆民放各社も相次ぎ

 データ通信の高度化やスマートフォンの普及に伴い、動画配信市場はこの5年で急成長。野村総合研究所の調査によると、23年度に799億円だった市場規模は31年度に2千億円を突破すると予測される。

 テレビ離れを危惧する既存のメディアも無視できないマーケットとなり、昨年までに在京キー局が相次ぎ配信事業に参入した。多くは500~1千円程度の月額見放題で、テレビで放送した番組を配信。独自番組を投入する動きも本格化している。

 日本テレビ系の「フールー」は同局系ドラマのスピンオフ番組などに力を注ぐ。フジテレビの「フジテレビオンデマンド」は今年度、独自のドラマなどを前年度比約3倍の500時間に増強する方針だ。

 「放送と通信の垣根は急速になくなりつつある」。ITジャーナリスト、三上洋さんはこう指摘する一方で「ただ、動画配信ビジネスは、まだ安定的な収益の仕組みを確立できていないのも事実だ」と話す。

 淘汰(とうた)も進む。DVDレンタルのゲオなどが昨年2月に始めた「ゲオチャンネル」は今年6月にサービスを終了する。25年に参入した音楽会社のエイベックス系「UULA(ウーラ)」も3月末に撤退。サービスが乱立するなか、存在感を示せなかった。

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2017.4.25 11:00
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